作品情報にスキップ

白なのか、黒なのか

通常価格 ¥165,000
セールスプライス ¥165,000 通常価格
セール
完売
税込

 【SIZE】H700mm x W700mm

【WEIGHT】500g

【作品材料】画仙紙・墨

【作品ストーリー】

私の作品は、言葉や文字が持つ“制限性”への問いかけを根源とする。

言葉が事象を囲み、さらに文字が言葉を閉ざす。この一連の行為のは、ある種の内なる矛盾を孕んでいるのではないか。書と対峙する時、そんな想いが常に心に湧き上がる。

「あわい」作品群は、この言語による制限から解放され「本来の姿」へ立ちかえる道を、事象本来の波長が持つ「微かな残り香」を手がかりに辿る、探求の一片である。

それは、紙に独自に配合した墨のみ(白抜剤などの特殊な素材は一切使用していません)で描くことによって、これまで以上に墨と紙の可能性を追求する試みであり、また同時に、描いた言葉ないしそれを示す具象、そしてそれらの意味、そのそれぞれの「あわい…間」にあるものを、墨と紙の個性の重なりと変化によって顕在化させ、一層深化した姿を見出す試みでもあります。

まず最初に、言葉やその意味を示すための墨を置き、次に紙全体を墨で覆い、乾燥とともに具象が現れるのを静かに待つ。

定着したはずの墨が、やがて抜けていく。

そんな不可逆的な現象は、幾重にも及ぶ一度きりの出来事(一回性)の集積として「あわい」の姿を発現させる。

それは、墨の五彩…「青」「黒」「紫」「白」「赤」…が創りあげた無限の色彩が、様々な紙の個性と出会うことで「紙」と「墨」の境界が溶解し、そのあいだに生まれた曖昧で移ろう領域の或る瞬間の風景である。

またそれは、形而の上と下である。
そこは“ある”と“ない”が同時に息づき、確かさと不確かさが重なり合うところ。

墨は、そんな矛盾を飽和しながら「あわい」を可視化してゆく。全て“在る”と“有る”の「あわい」なのだと諭しながら。

白なのか、黒なのか
それは、白が生まれているところなのか
それとも、黒くなろうとしているのか

いずれにしても、あなたの目に映ったこの瞬きは、永遠の中の“今”であり、それは今と云う“次の一瞬”であることだけは、これまでも、これからも変わらない。
それは確かな事だ。

【備考】

この「あわい」のシリーズは、表具の仕様によって、その表情が一変します。
その為、

・作品が一層皆様の日常に寄り添えること
・表具による表現の自由性

を重要視し、あえて原画のままにて展示・販売しています。表具のイメージや飾り方など、何なりとおたずねください。
もちろん、“作家好みな表具のリクエスト”も喜んでお受けいたします。

この作品のある風景が、皆様の日常になることを願って。

 comment

上村白冰の表現するモノクロの世界。
墨と紙の可能性を追求する試み」「定着したはずの墨が、やがて抜けていく。」この作家の言葉の意味を是非楽しんでいただきたい作品です。
シリーズの「黒なのか、白なのか」もご覧ください。