専門用語を出来るだけ排除して、直感でイメージできる、掛軸の世界をご紹介いたします。
では早速、掛軸の基本のお話を
1.掛け軸とは?
掛軸とは、掛ける巻物です・・・・そんなことはわかってるよ!!ですね…
もう少し具体的にお伝えすると、
掛軸には絵とか書が中に書いてありますね、その絵を鑑賞できるように、裏側に
和紙を貼りこんで、丸めたり、保存したり出来るように加工した物を掛軸といいます。
その加工する技術を、表装技術といいます。そしてその表装技術を修得し、掛軸を作る人を、表具師や表具屋などと言ったりします。
※この表具師や表装の言葉についても次回以降ご説明いたします。
【ワンポイント】
現在は、アート的な印象が強い掛軸ではございますが、掛軸が中国(北宋時代)から、伝来してきたときには、仏画の礼拝用として、製紙技術と一緒に伝わったとされております、そのため、伝来当初は、宗教的な利用が多かったと考えれます。(現在ももちろん宗教向けの掛軸デザイン等はございます)
薄い墨の色で書かれた書作品をみたことはありませんか?それは墨を擦ることを諦めたのではなく、淡墨で書かれた作品だったのですね。では淡墨作品の特徴や魅力を見ていきましょう。
2.掛軸の定義とは
よく、掛軸とタペストリー違いってなに?と聞かれることがあります、そして、掛軸とタペストリーを同じものと捉えている方もおります。
掛軸とタペストリーの違いは、掛軸の定義を知ることでわかることができます。
掛軸の定義は3つあります、その3つがしっかりと担保されていることが、本物の掛軸になります。
ではその3つとは何か?
1つ目は 鑑賞性
2つ目は 収縮性
3つ目は 保存性
以上の3つが担保されていることが、掛軸の定義となり、一つでも、欠けていると、それはタペストリーや、掛軸風の掛軸もどきになるということです。
では、その定義ですが、まずは、書家さんの作品を掛軸にする場合を例として、説明させていただきます。
3-1 「鑑賞性」とは文字を書家さんが紙に書いた時には、墨を吸収して、紙がしわくちゃになります、このしわくちゃな状態では、鑑賞するにもみっともなく、文字を綺麗に見せることができないので、
①文字を書いた紙に水をかけて伸ばす
②伸ばした状態で、裏からさらに、別の和紙をくっつける。
③乾燥させる
④しわくちゃの文字の紙をピンっとさせてシワを無くすのと同時に、文字に合わせて、生地や紙を周りに付けて、より文字を際立たせて鑑賞出来るようにする。いわゆる、掛軸の形式になってるということです。
これが、掛軸の定義の「鑑賞性」になります。
(しわしわが、ピカピカになるイメージ)
2-2 収縮性とは
くるくると丸めて、収納でき、かつ、また元に戻して広げても皺になっていない状態が収縮性になります。タペストリーや掛軸風の物、特に掛軸風のもの、生地の上に紙を貼っただけのものなどは、巻いたとたんにしわくちゃになります・・・
収縮を何回も繰り返しても、大丈夫なのが掛軸の定義の収縮性になります。
2-3 保存性とは
書の作品部分を、50年、100年と書いた状態のまま保存できるのが、保存性の意味になります。この保存性を担保するには、鑑賞性で和紙を裏から貼りこむ話しをしましたが、この裏から和紙を貼りこむ事を繰り返すことで、保存性を持たせることが可能です。
かんたんに説明したつもりですが、読み直すと、ちょっと難しいかもですが・・・
本当の掛軸と、掛軸風と、タペストリーの違いを判断するには、この3つがちゃんと担保できてるかをチェックすると、ちょっとした掛軸通になることができます。
著者について
掛軸コーディネーター 佐河太心(さがわたいしん)
創業80年、表装の専門店として渋谷と原宿の間で小さな掛軸屋「渋谷の掛け軸屋。」オルク有限会社 代表取締役